銃床の”シンセティック”とはなんなのか

2020年8月18日

銃のカタログなどを見ていると「シンセティックなのでガンガン使えます!」などと書かれていたりします。
最初の頃はイマイチ理解が出来なかったですが、最近はよくわかってきた気がします。

シンセティック(synthetic)の意味

シンセティック(synthetic)の意味は「合成の」とか「人工的な」で、銃の分野では「プラスチック製の」という意味になります。
プラスチックにもいろいろ種類がありますが、総称してシンセティックと呼ばれています。

 

シンセティックストックの良いところ

当たり外れがない

大量生産が可能なので品質の安定性は高いです。
節や木目が気に入らないということが無いので、通販で値段だけ見て買うこともできます。

傷が目立たない

黒い表面に多少の傷が入ってもあまり目立たないし、木のように凹むこともまず無いです。
傷がつかないわけではないが材質によっては木より傷つきにくいのは確かです。

水に強い

ウッドストック(木製銃床)の弱さの1つとして雨や汗が侵入し色むらや強度の低下の原因となることがあります。
水が入ったままロッカーにしまっておくとカビの原因にもなります。
しかしシンセティックならそのような心配はないです。

割れない

ウッドストックで特に破損が多いのが先台です。
先台の構造上、薄く作らないといけないので割れやすいです。

シンセティックであれば曲げに強いので割れることはまず無いです。
1回割ったら次はシンセティックになんてパターンもあります。

 

シンセティックストックの悪いところ

加工ができない

木と違って銃床の切り詰めや延長は出来ません。
そんな理由からクレー競技用の銃では一切採用されていません。
※ベント調整などは詰め木で多少対応できます。

オモチャっぽい

ここは完全に好みの問題ですが、銃の形状によってはオモチャっぽい印象を受けることがあります。

表面処理によってはベタつく事がある

モデルによっては表面加工が加水分解し、ベトつくことがあります。
特にシットリ系のマット加工されたものによく見られます。
これはどうしようもないのでマット層を溶かすかまるごと交換するしか無いです。

 

主な材質

メーカーごと、製品ごとに異なるが大きく分けて4種類ほどあります。

ポリプロピレン系(PP)

表面は未塗装のつや消しで車のバンパーのような質感です。
曲げに強い分硬くなく、若干柔らかく感じるかもしれません。
割れることもなく、水気にも強いです。

(ベレッタのアウトランダーなど)

エンジニアリングプラスチック系(繊維強化熱可塑性樹脂)

軍用銃のグリップ等にもよく見られる材質で表面処理はないです。
大部分がこの材質で作られた拳銃もあるほど強度が高いです。
硬質で傷もつきにくいです。

ポリプロピレン系の均一な表面とは異なり、いくらか繊維質な質感があります。

(現行のサベージなど)

表面処理をしたもの(Dura touchなど)

質感向上のために上記の樹脂ストックに表面処理をしたもので、シットリしたつや消し黒のものが多いです。
最初は良い質感だが数年で表面が加水分解してベトついてくることがあります。
高温多湿な日本においてこれを防ぐ方法はないです。

(ブローニングのライフルなど)

 

ラミネート加工が施されたもの

迷彩やカモフラージュ模様のラミネート加工(プリント)をしてあるものがあります。
下の材質はよくわかりませんが質感からはエンプラのような印象を受けます。
こちらはほとんど劣化しないですが、塗装面は1mmもないので移動時に擦れてハゲる事があります。

(カモフラージュ柄の製品など)

 

手入れ方法

共通する最重要ポイントは石油系溶剤が入っていないものを使用することです。
石油系溶剤とはつまりシンナーのことで、プラスチックを溶かしたり、強度を下げてしまいます。

ポリプロピレン系とエンジニアリングプラスチック系は水拭きを基本とし、それだけで良いです。
どうしても艶を出したければ車のポリマーコートで拭いても良いです。
アーマーオールやシリコンオイルが良いとも言われますが好みが分かれます。
※シリコンオイルには石油系溶剤が入っているものもあるので、「無溶剤」と書かれたものでなければなりません。

表面処理をしたものは特に注意が必要で、下手なものを塗ると質感が一気に悪化する事があります。
掃除としては水拭きのみとし、拭いた後はよく乾かす程度に。
それ以外のことはなるべくしないか慎重に試すのが無難です。

 

さいごに

材木資源の不足や形状の複雑化により、銃のモデルによってはシンセティックのみのものもあるほど広く普及しています。
安いものという目線だけで見ずに、木にはない強さや安定感を理解して活かしていくといいでしょう。

 

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